説明
2014年秋にバイクの大事故により九死に一生を得たシン・クア・ノンのオーナーのマンフレッド・クランクルでしたが、その後車椅子での長いリハビリを経て、ようやく復活してきたようです。このドイツ語読みされるワインにはパーカーが99点を献上しています。「Ratsel 16」は「16の謎、16のミステリ」と言ったような意味です。
パーカーのコメント(99点) 「自社畑からの限定品であるこのワインは81%シラー、7%ムールヴェードル、5%プティ・シラー、2.5%グルナッシュ、4.5%ヴィオニエのブレンドで47%全房発酵された。ブドウ畑別の内訳は47%がイレブン・コンフェッション、38%がザ・サード・ツイン、13%がクムラス、2%がモリー・アイーダである。フレンチオークで23ヶ月間熟成され、新樽比率は47%だ。 深いガーネット色で、どちらかと言うとさほど苦労もなく美しくハーモニーが取れたこの2016年シラーはベークド・プラム、ブラックチェリー、ブラックベリーコンポート、リコリス、スパイスケーキ、モカなどがハッキリと感じられ、煌めくように杉の箱、ライラック、メンソール、鉛筆の芯なども伴って、グラスから飛び出してくる。ビッグでフルボディで、果実味豊富であるが、堅く堂々としたケタ違いに豪華なタンニンと継ぎ目のないフレッシュさで口の中が覆われ、後味には鮮やかな果実味とファンタスティックなエネルギーがある。 もしワインを電気に例えるとすれば、このワインは限界を超えた高電圧である!1791ケースと600本のマグナムが生産された。飲み頃は2021~2046年」 |
シン・クア・ノン
カリフォルニアのみならず世界でも最上のシラー、グルナッシュ、ローヌ系白、ロゼ、デザートワインを造る伝説的なワイナリーと言えるでしょう。かつてはピノ・ノアールやシャルドネも造っていました(それらは現在では超お宝アイテムとしてオークションに出品されます)。オーナーでワインメーカーのマンフレッド・クランクル氏は鬼才という言葉がぴったりの人で、それほどワイン造りの経験があるわけではないのに、超高品質なワインを生み出しているのです。
クランクルが無名の頃に彼の造ったワインを飲んで驚いたロバート・パーカーは、ワイン・アドヴォケイト誌にシン・クア・ノンが掲載される前にクランクルに電話をし「大変なことになるからな」と告げたそうです。実際掲載日以降、クランクルの電話は鳴りっぱなしだったとか。
クランクルはSine Qua Non以外にもNext of Kyn、The Third Twin、Fingers Crossedといったワイナリーを展開しており、ローヌでは著名な生産者であるClos Saint Jeanの畑でシャトーヌフ・デュ・パプ「Chimere」を造るなど意欲的なワイン造りを進めています。
またグラシアーノ(スペイン原産)、トゥーリガ・ナシオナル(ポルトガル原産)といった世界的にはほどんど見向きもされないマイナー品種に注目し、そこから世界をアッと言わせる最高レベルのワインを生み出していることでも知られます。
ボトルやラベルのデザインを毎年変える事ができなくなった
シン・クア・ノンを有名にしているのが毎年ボトルデザイン、ラベルデザインがガラッと変わってしまうことで、一見しただけではどこのワインか全くわからないことが逆にシン・クア・ノンの特徴となっていました。通常はラベルなどのブランドイメージを何とか確立しようとがんばるものですが、クランクルはそんな常識にはとらわれず、まるでアーティストのように毎年変えていました。しかも他のデザイナーに任せたりはせずクランクル自らが行い、彼にとってはボトルやラベルのデザインはワイン造りと同じくらい重要なテーマでした。
ところが2016年頃から商標や著作権の問題が複雑化し、毎年違う名前をつけるのが困難になってしまいました。あまりに多くの名称がすでに登録済みとなってしまい、万が一にも名称でトラブったら訴訟に巻き込まれて金銭的な負担を負い、せっかく貼ったラベルを全て剥がさなくてはならないという最悪の事態すら想定されました。
そういうわけで2019年からは春リリースのワインはラテン語で「Unlabeled」を意味する「Distenta」と呼び、その後に番号をつけることにしました。また秋にリリースされる「Eleven Confessions Vineyard」のワインには名前を付ける事自体を止めてしまいました。それでもラベルのデザインは毎年変えています。
ラベル、キャップ、液面(コルク下1.2センチ)の状態は良好です。