ガラルディ (ワイナート20号 「南イタリア」特集より) リカルド・コタレッラ渾身の作品 満を持して挑んだ伝統品種の伝統ブレンド
「ラッツィオ出身のエノロゴ、リカルド・コタレッラ抜きに、現在の中南部イタリアワインは語れない。技術的に粗野だった産地に正しい学問としての醸造を教え、スタイル的に取り残されていたワインに新しい魅力を与えたのが彼だ。特に、中南部イタリアの土地本来の力を、世界市場で最も受容される形で開示して見せるということに関して、彼以上の才能はない。 そんな彼の代表作のひとつ、ガラルディ。ここは、ワイナリーの広報をも勤める建築家、アルトゥーロ・チェレンターノ氏の妻、ドーラの祖父の所有地だった。へーゼルナッツと栗で有名なカゼルタ県セッサ・アウルンカらしく、祖父も栗の栽培をしていた。1haのブドウ畑もあったが、バルベーラとサンジョヴェーゼが植えられていた。
オーナー一族と家族ぐるみの付き合いがあったコタレッラは、91年にこの家を訪れた時、ただちに土地のポテンシャルを見て取り、言った。 「商売になるから、ワイン醸造に取り組んでみないか」。標高450メートルという高地にもかかわらず、ここだけは雪が降らないという特別に温暖なミクロクリマだった。
コタレッラは土壌サンプルをすぐに持ち帰り、アリアニコとピエデイロッソを植えることを勧めた。セッサ・アウルンカもその範囲に含まれる、ファレルノ・デル・マッシコDOCエリアの定石どおりのブレンドだった。火山性土壊に最適のブレンド。それはただちに、既存の樹に再接ぎ木された。
初ヴィンテージは94年。できたワインをバリックで熟成させるのは、コタレッラならではの現代的手法だった。「マストロベラルディーノのような伝統的な造りでは、大樽で2年間以上熟成させますが、それではタンニンが固く、飲めるまでに6年間かかる。始めたばかりのワイナリーにとって、早く飲めるようになるバリック熟成は魅力的です」と、アルトゥーロ・チエレンターノ氏は言う。
できたワインは、ファレルノDOCエリアらしい強大なパワーとコタレッラ独特の流麗な質感が絶妙に合わさり、実在感のある気品を個性とした。この地のワインにありがちな暴れも、コタレッラの造る安価なワインに往々にして感じられる無機的なフラットさも、ここにはなかった。
ワインはテッラ・デイ・ラヴォーロと名付けられた。つまり、カゼルタが意味する、労働の土地。ここでもまた、カゼルタのテロワールを生かし、カンパーニャの栄光を現在に蘇らせようという努力が、素晴らしいワインとして実を結んだ。」 |